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​「経験3年」という“パスポート”

 

 

2005年の話です。

        ●

 

当時、セイファートのメイン事業は『リクエストQJ』。

美容師採用に特化した求人情報誌の制作・発行であった。

 

情報誌というからには“紙”の媒体である。

まだ“web”ではない。

 

(web版『リクエストQJ navi』のリリースは2007年3月)

 

ただ世の中は急速にwebへと移行していく。

同時にコピーライターの役割も減っていく。

なぜなら“売る商品”が『広告』から『情報』へと変わっていくからだ。

ただ2005年当時はまだ『広告』の時代。

“コピーライター”の活躍の場がある。

というかむしろ、コピーライターがいないと事業そのものが成り立たなかった。

 

ライター2名ではとても追いつかない。

営業担当がコピーを書く。

それでも仕事はあふれてくる。

しかも営業は、

「コピーを書いてるヒマがあったら商談に行きたい」と。

「だってお客さんは待っている・・・」

それほど美容室は“人”の問題で困っていた。

 

営業現場からは突き上げがくる。

「コピーライターをもっと採用してほしい」

 

そうか。そうだよな。よし採用しよう。

で、「何人必要なの?」

「5人でも6人でも」

 

わかった。

・・・なんて

そう簡単にコトは運ばなかった。

 

まず、私の中で疑心があった。​

「そう簡単に採用できるのか」

 

でも、と私は思ってもいた。

 

「やってみなきゃわかんない」

「しかも世の中には数多くの“才能”が眠っている」

うん。

​確かに。

 

ただ、と思った。

採用できたとして、その才能をわれわれは生かすことができるのか。

 

それが問題だった。

 

“いま”は、いい。

仕事はあふれている。

だけど将来はどうだ。

将来、このまま“コピーライター”の仕事がありつづけるのか。

 

 

時代は変化しようとしていた。

“紙”から“web”へ。


“紙”の広告媒体はピークを迎えつつあった。

そして“web”の時代には、

“コピーライター”の需要は細っていく。

 きっと、細っていく。

それはまさに私が経験した“現実”だった。

“求人情報誌のコピーライター”だった私の仕事が、あるときを境に“蒸発”したのだ。

 

(この話は後日。じゃないとまた“支線”に迷い込んでしまう)

 

 

私は決断を迫られていた。

 

コピーライターを採用するか。

それとも営業にこのまま負担をかけるか。

 

答えは出ていた。

ずっと前から出ていた。

 

「採用すべきだ」

 

ただ、採ったはいいけど、5年後にはどうなる。

「5人でも6人でも」なんて、おそらく必要なくなる。

そのとき私は決断できるだろうか。

“コピーライター”はいらない、と言えるだろうか。

たとえばコピーライターを、明日から営業に異動させる・・・

なんて

ムリ。

 

 

考えた。

 

たとえば3年間、“コピーライター”として働いてもらう。

だけど3年たったら、辞めてもらう。

 

いや、あり得ない。

 

そんな勝手なこと、あり得ない。

 

うーん。

 

じゃあどうする。

 

ライター。

コピーライター。

経験3年以上のコピーライター。

 

あ。

 

そうか。

 

ひらめいた。

 

未経験の“素人”を採用する。

アルバイトで採用する。

そして彼らには3年間、“経験”を積んでもらう。

“コピーライター”として3年間、活躍してもらう。

すると3年後、彼らは「経験3年のライター」になれる。

そうすれば彼らはどこにだって行ける。

広告会社も代理店も、

出版社だって面接を受けられる。

3年分の“作品”をファイルに入れて、堂々と面接を受けられる。

「ライター・経験3年以上」

そう書いてある会社に、採用してもらう“チャンス”が生まれるのだ。

つまり彼らはセイファートで

「経験3年」という“パスポート”を手にいれるのだ。

 

これだ。

 

私は興奮していた。

いける。

きっといける。

 

さっそく私は就職情報誌に広告を出した。

 

アルバイト募集。

コピーライター。

経験不問・未経験者歓迎。

 

さて、その結果は・・・

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